あらすじ
元夫・由紀夫の失踪から6年半。保険金受け取りまで半年に迫った持田佳奈(斎藤千晃)と現在の夫・持田孝明(卯ノ原圭吾)は、保険金が入ることを疑わず、将来の計画を立てている。不倫をしている孝明は、会社を辞め、不倫相手・岸本あゆみ(実倉萌笑)らと設立するベンチャー企業に出資することにしていたが、ある日、佳奈がたまたま入った居酒屋で、由紀夫に瓜二つの男(宮本聖矢)に遭遇。
真っ青になる二人だが、追い討ちをかけるように、あゆみは、佳奈はそもそも本当に生命保険をかけているのかと孝明の気持ちを試す。さらに孝明は、怪しむ居酒屋の店長(米元信太郎)に、あゆみといるところを見られてしまい…
果たして、「倉田」というネームプレートをつけた男は、由紀夫なのか?二人は保険金を受け取れ、孝明は不倫がバレずに、保険金を出資に使えるのか?
監督:小嶋貴之
コメント
20年以上仕事として1000本近くのMVをはじめいろんな映像をクライアントワークとして作ってきたのですが、数年前ふと⾃分の作品・プライベートワークを作っていないことに気づきました。このままだと⾃分の作品を撮ることなく歳をとってしまうという焦りを覚え、脚本の学校に⾏きなおしたり、スプロケというコミュニティでたくさんの役者と触れ合ったりしているうちに、MVの様な映像主義だけではない、芝居を中⼼とした⼈間性を重視した映画に⾃分の趣向もシフトしていきました。MVディレクターでもある⾃分の感覚をも取り込みつつ芝居の純粋性を中⼼にしたエンタメ性の⾼い作品を作ろうと制作したのが『帰ってこなかった男』です。混じりっ気なしの⾃分が投影できたと思っています。
考えると、仕事は⽇々納期がついて回り、⾒る夢でも基本⾃分が何かしらで追い込まれている事が多く、ずっと逃げる逃げないのラインをやじろべえの様に綱渡っている(サスペンス)、そんな⾃分が映画作りの主題に置いているのはずっと逃げたい主⼈公でした。またお笑いが好きという趣味もあって、そんなサスペンスフルな状況さえも笑ってしまおうというある種精神的な逃げ場を作りたいと思い、こんな作品が出来上がりました。
この世はたくさんの価値観があり、皆が⽣きやすくする為のいろんなルールが存在します。しかし誰もが、そのルールを逆に利⽤してすれすれのグレーゾーンで欲を満たそうとしたことはあるのではないでしょうか?例えば失踪者が7年⾒つからないと死亡扱いになるという「失踪宣告」。⼈が⼀⼈いなくなることで悲しむ⼈もいるけど、得する⼈も存在してしまうのが、この様々な価値観に溢れる現代です。サスペンスフルな世界で、そこで欲にまみれた⼈たちが右往左往する物語のドライブ感を楽しんでいるうちに、観客が本当の⾃分を⾒つけてしまう、そんな映画になったと思います。ぜひ、⼤きなスクリーンのある劇場でご覧ください。